2015年6月24日水曜日

サイレントマジョリティ

 本音を言わないひとびと

私の経験ですが、ある公共事業に関して、地元説明会を実施したところ、地元の自治会長と班長さん以外は、どなたも口を開かないということがありました。
大きな公民館会議室をお借りして、100名ほどの方々にお集まりいただいたのですが、自治会長と班長さん以外は、一言もお話しになりませんでした。

もっとも自治会長さんの発言といっても、事業計画に関する一般的なことで、地元の方々の関心事である潰地面積や用地補償単価などではないのですが・・・

その地元説明会は、地元自治体の課長さんに進行していただき、私どもが事業内容などの説明を行ったのですが、出席していただいた方々のすべてが相談してきたかのように、ただ資料に目を落としているだけで、説明者の私どものほうをたまにちらっと見るだけ、という雰囲気で散会となったのですが・・・

いずれにしても地元説明会で質問や反対意見がなかったため、地元自治体の長をはじめ、自治会長さんらと協議したうえで、その翌年度から事業に着手することになり、事業概要案を持参して、個々に関係者宅を訪問したところ、とんでもないことになってしまいました。

Aさん(農業): 俺んちのいちばんいい畑だ。
          ここを道路にするのは、絶対いやだ。
Bさん(商店主): ここで商売をずっとしてきた。移転したくない。
Cさん(お年寄り): せがれに話したら「補償費をいっぱいもらって、
          それを俺によこせ」と言われた。
           補償してくれるからといったって、その金をせがれに取られたのでは、
          そのあとの生活ができない。
           親子関係に波風をたてないでくれ。
  ・・・etc ・・・etc

とにかく地権者、関係者からの反対ばかりとなって、結局は、その事業をストップしたことがありました。

このとき、多くの方々が、自宅の居間でおっしゃったのは、

 みんながいるところで、俺が反対だと言えるわけがない。
 だから、俺が絶対いやだ、と言っていたということは、地元のみんなには内緒にしておいてくれ。
 俺以外の者が反対だと言っているから・・、としてほしい。
 これからもここで、俺は暮らしていかなくてはならないのだから。

というような内容でした。
画像は、本文とは関係ありません。
これに類することは、いろいろなところで経験しました。

  日本人、とくに田舎の人々は、みんながいるところでは、本音を言わない

という傾向が、私はつよいように思います。

その反面、親しくなってきて、こたつに招き入れていただけるようになると、

  こちらが聞いていないのに、地域情報、裏話などをどんどん話す

ようになってきます。

そういった話題で多かったのは、集落内のだれそれが出て行った、というものでした。

たとえば、下仁田町や南牧村であれば、3軒先の〇〇ちゃんが先週出て行ったという話に続けて、

 富岡や甘楽町、高崎に出られるものであれば、いまからでも出て行きたいやね。
 早くに出て行けた人は、幸せだいね。
 いまは、じいさんが軽トラに乗れるからいいけれど、じいさんが軽トラに乗れなくなれば、町に買い物に行くこともできやしない。
 こんな山のなかにとり残されて、みじめなもんさーね。

という展開が多かったと記憶しています。
画像は、本文とは関係ありません。
ときどき住民を対象にして、自治体では住民懇談会のようなものを開催しますが、その場では本音の意見が出ないと考えるべきで、こういことをやったというパフォーマンス以外の意味はないといってよいかもしれません。

また、意向調査ということで、自治体では住民を対象にしたアンケート調査を実施しますが、これも私の経験からいいますと、真意を隠したような回答が多かったように思います。

住民の本音を聞きたいというのであれば、住民と親しくなって、その住民が話したことを集落内の人々をはじめ、誰にも口外しないという信頼を築き上げた職員が聞き取りをする以外にないかもしれません。

それでも本音が十分に聞き取れるとは思いませんが、
 あとは、その方が何を思っているか、どのようにしてほしいと考えているか・・・
   をも正しく察知する能力を身につける以外にないといってよいでしょう。

人口減に対応しようとする自治体では、住民の本音をよく把握して、適切な人口減対策を構築してほしいと思っているところです。

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