2014年2月7日金曜日

富岡製糸場と絹産業遺産群

高崎市・富岡市の対応

もう10年以上も前のことになりますが、富岡製糸場を世界遺産登録へ!といった活動をされている方々に、「私たちと一緒に運動しませんか?」と誘われたとき、私は、

 富岡製糸場が世界遺産に? そんな馬鹿な!
 富岡製糸場の歴史的な価値は、十分に知っているつもりだが、世界遺産に登録されるほどのものとは思えない。
 富岡製糸場が世界遺産になるのであれば、世界中が世界遺産だらけになってしまうのでは?!

といった気持ちでしたので、そのお誘いをお断りしました。
いまでも、富岡製糸場と絹産業遺産群が世界遺産に登録される可能性は、高くないのではないかと感じています。
しかし、最近の世界遺産登録の動きを見ていますと、ひょっとしたら世界遺産に登録されるのかな、といった気持ちになるときもありますが・・・
といいますのは、世界遺産登録の基準といいますか、その決定過程において、純粋な文化的な価値といったものだけでなく、政治的なもの、ロビー活動といったものも大きく作用しているやに感じられるからです。

たとえば、富士山の世界遺産登録に際して、三保の松原を除く、としたイコモスの判断に対して、最終的には三保の松原も含めた世界遺産登録(実際には、条件付きというところなのですが)が実現しました。
それぞれの判断があってよいことですし、イコモスの判断がすべて正しいとは限りませんので、それぞれの判断が異なることは、まったく問題ないことですが、世界遺産登録の最終的な判断となりますと、甘くなる傾向が多いように感じられます。

といった状況を考えるとき、富岡製糸場と絹産業遺産群が、まったくNO!ということはないかもしれない、と思えるときもある・・・、今の私の気持ちは、そんなところでしょうか。
これは、今年の2月1日付の「広報とみおか」です。
これによりますと、イコモスの勧告が5月で、6月下旬に世界遺産に登録されるかどうかが決まるということになります。

今年の2014(平成26)年は、2004(平成16)年の春に群馬県が世界遺産推進室を設置してから10年となります。
そして、2006(平成18)年には、群馬県知事が提案書を文化庁長官に提出しました。
しかし、このリスト作成に関しては、高崎市の「負担が膨大」との理由により、旧新町屑糸紡績所がリスト入りしないなど、有力な構成資産候補がリストに入らないという結果になりました。
私は、この高崎市の対応を知ったとき、将来を見据えた最良の選択をされたと思いました。

新聞記事の「膨大な予算を伴う紡績所の取得・管理は避けたい」という高崎市の対応は、
   たいへんもっともなことだと思いましたし、
     いまも高崎市はすばらしい判断をされたと思っています。
高崎市の対応をはじめ、この暫定リストの提出前には、多くの市町村の思惑が交錯し、さまざまな動きがあったやに聞いています。

このころであったと記憶していますが、ある市の幹部職員が群馬県の職員に、

 世界遺産に登録されない事態になったとき、その責任は、誰がとるのか!

と詰め寄ったという話も聞いたことがあります。

高崎市の対応と正反対の対応をした富岡市は、片倉工業から
  敷地 51,022.07㎡  を  1,632,706,240円
で購入しました。

計算してみますと、1,632,706,240円÷51,022.07㎡=32,000円/㎡となり、約10万円/坪という購入単価になります。

この新聞記事によれば、1割が富岡市の負担ということですので、1.6億円を富岡市が支出したことになります。
この記事をもとにして、不動産鑑定士さんと話をしていたところ、不動産鑑定士さんは、

 建物などを取り壊すことができ、更地にすることができる土地であって、マンションとかショッピングセンターなどが建てられるという土地利用規制状況であれば、広大地ということなどを考慮したうえでも、それなりの金額での取引が可能かもしれません。
 しかし、富岡製糸場の土地としてしか使い道がない土地であり、一般的な商取引上の不動産売買になじまない土地、いわば買い手がいない土地といってよいでしょう。
 まー、普通のひとにとっては、この土地をあなたにあげる、といわれてもいらいないよ、ということでしょう。土地と建物がセットになっていますからね。
 そういった意味では、
  16億円の土地取得は、適正な取引価格であったかどうか・・・、
  どのように土地の価格を評価するか・・・、
とても難しいことですね。

といったようなことを話されたと記憶しています。 

富岡製糸場の建造物は、富岡市に無償譲渡されたのですが、これらの整備事業に要する全体額の試算額が、富岡市から

 100億円

と発表されていることを考えるとき、高崎市が判断したように、文化財の整備、維持保存には多額の予算が必要になる、ということがいえるかと思います。

高崎市の対応が最良なのか、富岡市の対応が最良なのか、それは、ひとそれぞれによって、お考えが違うと思います。

高崎市と富岡市における対応が、それぞれの市民にとって、
  どのような結果を招くかは、
    これから先、それぞれの市民がよくわかってくることかもしれません。

※ 補助金に関しての補足説明
 先日のブログ記事で、
100億円の50% → 50億円の国庫補助金
     といった書き込みをしましたが、
          一般的には、交付する補助金の上限額が、補助金交付要綱などで決められています。

たとえば、補助率1/2となっている補助金交付だからといって、かならずしもその1/2に相当する補助金の交付が受けられるものではありません。
補助金交付要綱では、1/2の補助率となっていても、補助金の交付額の上限が5,000万円と定められていれば、100億円の事業費(補助対象経費)であっても、50億円の補助を受けることはできません。上限額が5,000万円という補助金交付要綱であれば、交付される補助金は、5,000万円ということになるからです。

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