2013年7月6日土曜日

世界遺産候補

絹産業遺産群とは・・・

一昨日(7/4)の読売新聞に掲載された記事を紹介いたします。
「世界遺産登録 準備を万全に」と題したもので、これから登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」について、富士山の世界文化遺産登録の動きをもとにしての日本銀行前橋支店長 相良雅幸氏による提言です。

相良氏は、

① 文化遺産といえども、経済振興と環境保全という利害の相反する課題に取り組まなければならない
② ゴミ対策は、当県でも重要な課題
③ 構成資産の関連付けを明確にすることも必要
との課題を示したうえで、

③については、

「異なる市町に所在するうえ、施設相互の関連性が必ずしも明確ではないように思われる」
と述べています。

相良氏の提言に対して、誠に恐れ多いことですが、私の考えを述べさせていただきます。

①の経済振興と環境保全について

 私は、このブログで、「世界遺産に登録されたとしても、当初の1年ないし2年ぐらいは、多くの見学者が来られるが、そのあとは、めっきり減ってしまう、これは、これまでに登録された世界遺産に共通する現象だ」ということを述べさせていただきました。

 そうした一時的な見学客の増加によって、観光収入などの面において、ある程度の経済効果が得られ、それが一時的にせよ、マイナスでなくプラスになれば、それはそれでありがたいことですが、その一時的な効果すら得られそうにない、というのが私の見込みです。

 その理由としては、群馬県は〝温泉県〟であり、有名な温泉がたくさんありますが、絹産業遺産群を構成する市町には、その有名な温泉がなく、地元の宿をメインとする宿泊をセットにしたツアーコースの設定ができないどころか、それぞれが高速道路沿いにあって、自動車での来訪に便利な場所に立地していることです。

 これがどのような意味を持つかといいますと、富士山で弾丸登山が問題になっているようですが、群馬県の絹産業遺産群は、首都圏や中部、東北などから高速道路をつかった〝弾丸ツアー(日帰り)〟が可能だということです。

 また、現時点では、絹産業遺産群の市町には、大型バスで何台も・・・といった団体客が一堂に会して、食べたり飲んだり、宿泊できる場所もありません。←富岡市内にホテルがありますが、どれだけの容量なのか・・・
 いずれにしても、そうした場所は、磯部温泉や伊香保温泉などの旅館やホテルへ・・・ということになります。

 だからといって、これから富岡市や下仁田町で、大きな旅館やホテルをつくろう、と考える人はいないのではないでしょうか。
 一時的なブームで、客足がばったり遠のくことがわかっているのですから。

 いまの富岡市と下仁田町の取り組み状況を見ていますと、経済振興と環境保全の両立どころか、経済振興もできなかった、環境も悪化させてしまった、という共倒れ的な状況になってしまうように思われます。

 すこし、①のテーマからはずれるかもしれませんが、世界遺産に登録されることが地域振興になるのだ!と多くの人々が認識しているように感じます。
 世界遺産登録を打ち出の小槌のように感じている方も見受けられます。

 世界遺産に登録されたとしても、それがゴールでもありませんし、打ち出の小槌によって、小判が打ち出されてくることもないと、私は考えています。

 世界遺産に登録されるにせよ、登録されないにせよ、そのどちらにしても、これからがたいへんなことになるのです。

 たとえば、富岡市の場合、富岡製糸場の保存に対して、これから多額の予算を確保しなければなりません。
 この予算は、文化財保護のために必要な予算であって、世界遺産に登録されない事態になっても必要な予算なのです。

※ 2006年に富岡市教育委員会が発行した「旧富岡製糸場建造物群調査報告書」には、それぞれの建物の写真が細かく掲載されています。この写真を見ますと、建物の傷み具合がよくわかります。
※ 富岡市においては、保存活用計画では、こうした建物をランク分けして、必要な保存のための措置を講じるとしています。

 富岡市民の方々が「世界遺産にならなかったのに、そんなに大金をかけるなんて、実にもったいない」と思っても、貴重な文化財としての保存を図らなくてはなりません。

 じょうずにやらなければ、
 経済振興もだめになる、環境も悪化する、
 そのうえ、これから先、製糸場や荒船風穴を保存するために多額の予算が必要になり、ひいては市町の財政を圧迫する・・・
といった事態になりかねません。

 世界遺産登録をめざそう、という運動をしている方々は、このことを承知したうえでのことなのだろうか・・・と、私はずっと疑問に思っています。

②のゴミ対策について

 これについては、富士山の場合と違って、あまり関係ないのではないかと思います。

③の構成資産の関連付け、その明確化について

 私も、これがいちばんの問題(課題)ではないかと思っています。

 それぞれの構成資産との関連については、下仁田町と群馬県のHPをご覧になってください。
  下仁田町 → http://www.town.shimonita.lg.jp/kyouiku/m01/m01/01.html
  群馬県← http://worldheritage.pref.gunma.jp/ja/ks003.html
 ご覧になって、どのように感じられたでしょうか。

 構成資産の関連付けについて、『なるほど!』とガッテンしていただけたでしょうか。

 私には、つじつま合わせのように感じる部分があります。
 それは、構成資産が図示されていて、相互に矢印で結ばれていますが、その成立と最盛期、終焉の時期等がまちまちであることです。
 また、「遺産群」の「群」に違和感があります。
 「群」という字は、

  (同類のものが)ひとかたまりになっていること

といった意味です。

 絹産業(この「絹産業」も気になりますが)というくくりのなかでは、同類のものといえるかもしれませんし、相互に影響しあって、発展してきたともいえるのでしょうが、
 構成資産の明確な関連性が、私の能力では、なかなか理解できません・・・

0 件のコメント: