2019年7月22日月曜日

令和元年7月18日 第一小法廷判決

使用料請求事件
 平成30年(受)第533号,第536号ないし第542号

この裁判は、たいへん興味深いものであると思います。
農家にとって、農業、とくに稲作と用水の確保は、とても大切なもので、干ばつの年には水争いが起きたり、雨ごいなどの神事を行い、水を一生けんめいに確保したものでした。
私の場合、用水確保の歴史に興味があって、「甘楽多野用水誌」に水論(水争い)などに関する駄文を寄せたこともあります。
2016.3.21 撮影
上の画像は、ある用水の水路で、空き缶などが浮かんでいるようすになります。
この用水を管理している土地改良区の方によれば、用水路にごみが捨てられたり、動物のし尿などが流され、その対応にとても苦慮しているとのことでした。
この背景にあるのは、農家がすくなくなり、水田面積が減少し、大切な用水を守ろうという意識が地域全体で希薄になってきたからではないかと私は思っています。
かつて水田であった土地が宅地になったり、耕作が継続できなくなったから・・・という理由で、土地改良区から脱会する農家が多くなり、これが土地改良区の財政基盤を弱くしているという実態もあります。
さらには、水路などの施設が老朽化して、ますます維持費が必要になってきているということもあって、どこの土地改良区も厳しい運営になってきているといいます。
裁判例情報で、判決文をダウンロードしてみました。




補足意見で述べられていることの対策を早急に行わない限り、こういった裁判が全国各地で起きる可能性があるでしょうし、水路の維持管理ができなくなり、農業用水が確保できなくなるだけでなく、住宅からの排水ができなくなってしまう・・・といった事態になることも想像されます。
わが国のインフラ整備、とくに下水道整備の遅れ、まちづくりに対する全体的な施策の貧弱さによって、こういった問題が起きているともいえるわけで、早急に根本的な解決を図っていってほしいものだと思います。
それぞれの地域にある農業用水について、これから先どのように維持保全していくのか、国・自治体・土地改良区などの農業団体・地域住民がしっかり考えていく、そんな場づくりも必要かもしれません。
いずれにしても今のままでは、生活の基盤が揺らぎかねない、そんな事態になっていくのではないかと、そんな悪い状態を私は想像しています。

皆さんがお住いの地域での
  農業用水の維持管理は、
   どのように行われていますか。

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