2016年11月29日火曜日

条件付き再認定から1年(続き)

現地再審査報告

きのうのブログ

条件付き再認定から1  このジオパークは今・・・
http://geogunma.blogspot.jp/2016/11/1.html

の続きです。

ここで紹介する現地再審査報告は、公開版として、ネットで誰もが見ることができます。
きのうのブログにおける〝このジオパーク〟に関する現地再審査報告の全文は、ネットで検索してお読みいただければ幸いです。
ここでは現地再審査報告の中から、私が関心を持った部分を抜き出し、それを紹介させていただきます。
なお、固有名詞は××(伏字)とし、必要に応じて改行、文字飾りを本多が行いましたが、文面の変更はいっさい行っていません。

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各ジオサイトの状況は、事務局によって把握されていない。ジオツアーが行われる際に、案内者がその場の状況を確認する程度であり、計画的にモニタリングは行われていない。
また、各ジオサイトの保全管理計画も考えられておらず、後述する地球科学的な価値の明確化とともに、改善が必要な点である。

現在の××箇所のジオサイトについては、保全の対象とならないもの、見学施設、科学的価値が明確でないものが含まれているため、整理が必要である。特に地球科学的価値が明確でないものについては、今後、調査・研究を進める必要がある。


この地域の特産品である×××××、×××××については、このジオパークの地学的背景と関連させて説明しようとする努力はみられるものの、まだ調査、研究が不十分であり、ジオツーリズムの素材として十分に活用されているとはいえない。

この地域の地学的背景を語る際の良い資源となるものであるが、そうしたことを示すジオストーリーは、十分に検討されているとはいえない。

ジオサイトに設置されている看板の内容が難解であるため、認定審査時に修正が求められていた。それについては、対応がすすめられ、科学情報の発信方法については改善がみられる。

ただし、説明の対象となっているものの多くは、この地域の構造地質学的な特徴である。たとえば×××や×××では地質学的な説明はあっても景観の地形学的な説明はほとんどない。
表現を易化するだけでなく、この地域に存在する地学的資源について改めて検討したうえで、それぞれの地学的特徴の説明をしていく必要がある。

今後、多面的な調査、研究を進めるため、ジオパークとして研究を奨励し、その情報の蓄積と情報発信をはかる必要がある。

今後、ジオサイトの見直しと各ジオサイトの科学情報の更新を継続的に進めていく活動を意識的に進めていくことが必要である。

域内の中学校において、総合的な学習の時間を用いて、地球科学についての基礎的な知識や、地域の地質の特徴について理解する機会、また×××ジオパークをPRする活動などが行われている。

ジオパークが教育機関と連携をとり、実施されているもので、その取り組みは評価できる。ただし、その内容については、本審査で見たものは、一部で高度なものを扱っており、生徒の他の教科における学習内容を考慮した内容になっているのか、また生徒の興味を引くものになっているか疑問が残る。
ジオパーク活動における教育活動は、基本的な活動の一つに位置づけられており、その方針については、それぞれのジオパークにおいて、十分検討されたものである必要がある。ただ単に、「地域の地学的背景を学ぶ」、あるいは「地学についての発展的内容を扱う」というものにするのではなく、×××ジオパークとしてのジオパーク学習(教育)をどのように行うのか、その教育内容や方法について、×××ジオパークの関係者が、教育や地球科学の専門家と協議したうえで、内容を検討し、構築していくことが必要であろう。

ジオパークにおける教育については、地域の地学的資源の評価とともに、国内外で行われているESDの実践なども参考にし、その内容について十分な検討が必要である。現状では、そうした検討が不十分であるように思われる。今後、内容の精査など見直しが必要である。

この地域で発行されている書籍類などは、×××ジオパークの発行物にはなっていない。
元々活発であった既存の団体が、×××ジオパークができたことによって、どのように発展したのか現状では不明である。
今後、×××ジオパークとして、地域の研究活動の推進にどのように貢献したのか、分かるようにすることが望まれる。

現在、×××ジオパークの予算ならびに意思決定といった運営の主体となっているのは、×××町である。

推進協議会が存在するものの、そこはジオパークとしての意思決定機関とはなっていない。
実質的には、×××町役場の一組織であるジオパーク推進室が、予算や活動方針などの決定を行い、推進協議会の会長である町長の責任において実施されているという状況である。

推進協議会が組織として、この予算、決算について議論することはない。

×××××××が存在していたことがこの地域でのジオパーク活動を始めるきっかけになったことは理解できるが、認定後4年たった現在において、町の受け持つ事務局と×××××××の分掌がはっきりしていない状況であるのは、好ましい状況ではない。
管理組織、運営体制の整備をすすめ、各機関、団体の役割を明確にする必要がある。

町、×××××××、日本ジオパーク××××××の活動は、×××ジオパークの名の下で進められているが、それぞれの組織がシステマティックに結びついているわけではない。そのような状況であるため、どこがジオパーク活動の主体であるのか、また責任の所在がどこにあるのか、不明瞭な状態で活動が進められているといえよう。

現状では、×××ジオパークの活動規模がそれほど大きくないため、活動の中で大きな問題は発生していないようである。
しかし、こうした方式は、閉鎖的な組織運営であり、ボトムアップの活動とはいえない。

ジオパークに関わる人あるいはこれから関わろうという人が、活動に対して意見を述べる機会を事務局は、制度として整えなくてはならない。

今後は、組織や活動の内容、会計の透明化をはかり、
様々な人や団体が関わることができるガバナンスの方法を検討する必要がある。


これまでガイド養成講座を受講した人が、主体的に日本ジオパーク××××××という組織をつくり、×××ジオパークを盛り上げようと活動している。

こうした活動は、評価できる動きである。一方で、この団体が、×××ジオパークの全体の計画のなかでどのように位置づけられているのか、不明である。
明確な位置づけをし、こうした団体の活動を、推進協議会事務局が支援し、同時にこうした団体からの意見を吸い上げる仕組みが必要である。
日本ジオパーク××××××が自発的に誕生したことは、地域住民の中でジオパーク活動を進めていこうという機運の顕れとみることができるが、今回の審査時のガイド内容から判断すると、ジオパークのガイドとしては、今後相当なレベルアップが必要であると思われる。一般的な、また日本列島スケールの、さらにそれぞれのジオサイトにおける地球科学、地理学的な情報に乏しいことがしばしばあった。各ガイドの継続的な研鑽が必要であり、推進協議会事務局はその方策の検討をすべきであろう。


×××ジオパークでは、認定後の4年間の活動のなかで、認定時に指摘された点について改善がはかられてきた。

しかし、そうした活動を進めていく中で、ジオパーク活動の根本ともいえる、地域の自然資源の評価とその保全方法の検討や、×××ジオパークのステークホルダーとの関係性の構築、ガバナンスのあり方の検討、さらにはこの地域の目指す方向の検討など、活動の根幹に関わる部分については、組織体として主体的に議論を積み上げてはきてはいないように思われる。


現状のままで、この地域においてジオパークの活動を進めていった場合、おそらくこの4年間の活動の延長としてジオパーク活動が行われると想定される。
そうした場合、×××ジオパークにおいては、ジオパークという仕組みが、地域の諸問題の解決において何も貢献しないように思われる。
×××町の人口は、平成17年には×××××名いたが、審査時には××××名であった。

毎年×××人ずつ減少しているこの町で、日本ジオパークを名乗り続けることのメリットと、投資しなければならないリソース配分のバランスについて根本的に見直し、推進体制を再構築した方が良いと考える。

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このジオパークは、来年の秋(条件付き再認定から2年後)に再(々)審査を受けることになっています。

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