2013年9月3日火曜日

まちづくり-となりのトトロ

「となりのトトロ」に描かれた
やさしさ・地域のつながり

いま、たびたび痛ましい事件や、とても切なくなってしまうようなが起きていますが、そんなニュースに接したとき、どうしてこんなことになってしまったのかな・・・と、私は悲しい気持ちになります。

小さな子どもやお年寄りが被害にあわれたニュースなどが報じられますと、とても暗い気持ちになってしまいます。

そんなとき、「となりのトトロ」の曲を聴き、サツキちゃん、メイちゃん、トトロや猫バス、里山、田植えなどの農作業、鎮守の杜をはじめ、そこで暮らしている人々の姿などを見ていますと、なぜだかふさいでいた心が明るくなるというか・・・気持ちが明るくなってくるのです。

私が子どものころも、いろいろな事件があり、多くの人々が悲しくなるできごとがなかったわけではありません。

しかし、「となりのトトロ」で描かれている時代が懐かしく感じられるのです。
ノスタルジー、郷愁ということかもしれませんが、「となりのトトロ」で描かれている風景などは、私が子どものときとまったく同じなのです。

宮崎駿監督の作品は、すべての作品が好きですが、私のお気に入りは、なんといっても「となりのトトロ」です。
それは、サツキちゃん、メイちゃんのかわいらしさ、トトロや猫バスなどの活躍もさることながら、「となりのトトロ」で描かれている里山、田植えなどの農作業、鎮守の杜をはじめ、そこで暮らしている人々の姿が、私の小さかったときとまったく同じだからかもしれません。
これは、私が好きな場面のひとつです。

急に雨が降ってきて、地蔵様のところで雨宿りをしているサツキちゃんとメイちゃんに、勘太(カンタ)くんが傘を差しだしている場面です。
「となりのトトロ」をご覧になっている方は、これまでの勘太くんの行動-素直にやさしさを表現することができない-をご存知だと思いますが、破れて穴があいている傘をサツキちゃんとメイちゃんに差し出すことによって、勘太くんがすこしずつ素直にやさしさを表現できる少年に変化していきます。

このあと、サツキちゃんとメイちゃんが勘太くんの家に傘を返しに出向きます。
照れて、サツキちゃんに傘を貸したと母親に言えなかった勘太くんのかわいいい少年らしさ、竹ひごの模型飛行機を持って、部屋のなかを飛び回る姿が描かれますが、それは、これからサツキちゃんに対して、素直に接していける、そう思った少年の喜びがあふれている場面なのです。

破れた傘、当て布のある半ズボン・・・豊かな生活ではありませんでしたが、困っているサツキちゃんとメイちゃんのために、傘を差しだし、自らは雨のなかを走って帰る勘太くんの姿は、あの当時の多くの少年の姿であり、「となりのトトロ」で描かれている時代には、珍しいことではなかったと思うのです。

つぎに、私が好きな場面は、メイちゃんを探す溜池での場面です。
この捜索の場面には、パトカーも消防車も警察官・消防官も登場していないのです。

いまの時代であれば、小さな女の子がいなくなった、といった〝事件〟が発生すれば、すぐに住民が110番に通報して、たくさんの警察官-鑑識や警察犬をはじめ、場合によっては、ヘリも・・・-が捜索に動員されて、この溜池のまわりを立ち入り禁止にして、大がかりな捜索を展開することでしょう。

私が子どものとき、山火事が発生したのですが、誰が指揮するでもなく、おとなは手に手にスコップやのこぎり、斧などを持って、山火事の現場に走って行きました。

私が子どものころは、どこの家にも電話がある、といった状況でなく、消防署の望楼で見張っている署員が煙を発見して、消防車を出動させるといった時代でした。
このような状況でしたので、初期消火は地元の人々と地元の消防団員が行わざるを得なかったという実情もあったのですが、実に手際がよいおとなの行動をいまでもよく覚えています。

となりのトトロでも、サツキちゃんが勘太くんに案内され、電話を借りに出向く場面がありますが、私が子どものころは、そんな状況でした。

ですから、警察署や消防署に通報することよりも、

 子どもがいなくなったときは、とにかく早くに見つける、
 なにごとをおいても駆けつけて、早くに火を消す、

といったことが、なによりも大事なこととされていました。

いまは、痛ましい事件があとを絶ちませんので、まず事件性のこと-手がかり・証拠の保全-を考えて、
 捜索のためとはいえ、住民が溜池をさらう、といったことなどをしてくれるな、
という警察署や消防署からの〝お願い〟があるのかもしれません。

いま、全国各地で、まちづくりが模索されていますが、私たちが暮らすうえで、

 いちばん必要なものは、なんだろうか・・・

と考えたとき、

 自分は濡れてもよい。このふたりのために、役立ちたい、と思い傘を差しだす〝やさしさ〟

であり、

確かに、いまの時代は、なにかあれば、それは事件ではないか、ということを想定することも必要であり、住民が勝手に捜索しないほうがよい、という時代になっているのでしょうが、こうした捜索のことは別のことだとしても、

 自分たちの地域のできごとに対して、
 自分たちでできることは、がんばってやってみよう、
 皆で支え合って生きよう、
 そんな気持ちを共有すること

ではないかと思うのです。

つぎの場面も好きな場面のひとつです。
勘太くんがサツキちゃんに「溜池で靴が見つかった。でも、メイちゃんのものかどうかわからない」ということを〝三角乗り〟の自転車で急報する場面です。

勘太くんがサツキちゃんとメイちゃんのために大奮闘する場面です。

「となりのトトロ」は、勘太くんのやさしさをはじめ、勘太くんがやさしさを表現する能力を学びながら成長する物語でもあるのです。

宮崎駿監督が引退される、とのニュースが報じられていますが、〝宮崎アニメ〟のファンとして、とてもさびしく思っています。

おそらく、これから先どのような時代になろうとも、

 やさしさ、
 地域のつながり、
 このふたつは、私たちの暮らしを支えるもっとも基本的なものとして、ずっと受け継がれていかなければならないもの

ではないか、と私は思っています。

 
  やさしさ、
 地域のつながり、
が基調になって、いろいろなまちづくり事業、プログラムが実施されれば、
大きな成果をあげるまちづくりとなるのではないでしょうか。

※ 最後にどうでもよいことを・・・
 
  勘太くんの〝三角乗り〟ですが、かつて勘太くんと同じ〝三角乗り〟をした私の経験からは、両手でハンドルを持っていては、自転車に乗っていられないのではないか・・・と思います。
  私は、右手でサドルを抱え込み、その右手で自分のからだを自転車に〝固定〟していました。

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