2019年11月13日水曜日

日本ジオパークの認定返上へ

初めての認定返上:天草ジオパーク

天草ジオパークの日本ジオパーク認定返上(日本ジオパークネットワーク(JGN)からの退会)は、日本中のジオパーク関係者、ジオパークに関心を寄せている人々に、大きな衝撃を与えたと思います。
このNHKの記事全文は、つぎのとおり(↓)です。
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地域の貴重な地形や地質などを保全し、教育や観光などにも生かす「日本ジオパーク」に認定されている「天草ジオパーク」について、関係する自治体でつくる協議会はジオパークの取り組みが交流人口の増加につながっていないなどとして、来年3月末をもって認定を返上することを決めました。
日本ジオパークの認定が返上されるのは、今回が初めてのケースです。 
「天草ジオパーク」は、平成26年、天草地域全体が「日本ジオパーク」の認定を受け、天草市と上天草市、それに苓北町でつくる協議会が解説板を設置したり、ホームページで情報を発信するなどの取り組みを行ってきました。 
しかし、去年、4年おきに実施される、更新に必要な審査が行われた際、天草ジオパークの再認定は認められたものの、「地域全体の連携が取れておらず、活動が不十分」などとして、2年以内に改善する条件が付けられたということです。 
これを受けて協議会で話し合った結果、「ジオパークの概念が分かりづらく、住民にも浸透していない」「3つの市と町で毎年あわせて1000万円近くを負担しているのに目的だった交流人口の増加につながらなかった」と、4年間の活動を総括したということです。 
そのうえで、「ジオパークを一度外れて、自然の資源を生かした活動をわかりやすく進めたほうがいい」として、認定期間が切れる来年3月末をめどに、認定地域が加盟する日本ジオパークネットワークから退会し、認定を返上することを決めました。 
今後は、これまでの成果を活用しながら、それぞれの市や町ごとに予算を組んで、貴重な地形や地質の整備などに取り組んでいくということです。 
「日本ジオパーク」は全国で44地域が認定されていますが、認定を返上するケースは初めてです。 
日本ジオパークネットワークの斉藤清一事務局長は「ジオパークは新しい取り組みで認知度はまだ高くなく、認定されたとたんに交流人口が増えるものでないことは最初からわかっていたと思う。「天草ジオパーク」のもとになった御所浦地域は日本のジオパーク活動に当初から関わっており、仲間がやめるのは残念だ」と話しています。
天草ジオパーク推進協議会の会長を務める中村五木天草市長は「ジオパークに認定されてから2市1町で1億1000万円を事業の実施に使っている。しかし、国民にあまり認知されておらず観光事業にも結びついていない。これがわれわれの決定の理由の1つだ」と話しています。
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天草ジオパークの認定返上から見えてくる日本ジオパークの問題点について、私の考えを紹介したいと思います。

① ジオパークの運営にお金がかかりすぎること、ジオパークの運営主体に過大なことを要求すること。
 小さな自治体が取り組んでいるジオパークでは、到底不可能と思われることを再認定審査のときに要求することです。
 その事例として、つぎのブログ(↓)をご覧ください。


「中国のジオパークと交流するんだって?!」 「たいしたものだね!」


もっとお金かけろってことなのか? 日本ジオパーク いちばん大事なことは・・・?

審査する側では、日本ジオパークのレベルアップを目指し、助言、指導しているということでしょうが、個々のジオパーク運営主体が抱えている実情を無視したものと思わざるを得ないことを述べる、そういった無神経さが日本ジオパーク委員会のメンバーにあること、これを多くのジオパーク運営主体が不満に感じていて、これが天草ジオパークの認定返上の底流にあるのではないかと私は想像しています。

② ジオパークのスタートが、地学研究者の生き残りを賭けたものであったこと。
以前、つぎのブログ(↓)


これからのジオパークが進む方向とは・・・?

で紹介しましたが、日本のジオパークがうまくいかなければ、地学研究者は日本で生き残れない、という危機感から日本ジオパークが生まれたこと、これがジオパークに広がりをなくしていることではないかと私は思っています。

今後、日本のジオパークが発展していくためには、地学偏重の考えから脱却して、地域経営への視点を取り入れたり、生物、歴史や文化など、その地域にあるものの魅力を引き出し、それらを磨き上げることの大切さ、これを主眼にしたものにしていくべきだと私は思います。

③ 『日本ジオパークになれば、観光客が大勢やってきて観光収入が増える』と、自治体の首長、議員、職員をはじめ住民までもが、「捕らぬ狸の皮算用」的な考えになっていること。
先に引用させていただいたNHKの記事に、

 天草ジオパーク推進協議会の会長を務める中村五木天草市長は「ジオパークに認定されてから2市1町で1億1000万円を事業の実施に使っている。しかし、国民にあまり認知されておらず観光事業にも結びついていない。これがわれわれの決定の理由の1つだ」

とありますが、天草ジオパーク推進協議会の会長を務める中村五木天草市長の考えは甘いと私は思います。
観光による効果を最大にしたいのであれば、行政と住民が一体になって、一生懸命に汗をかき、がんばることが必要なことであり、日本ジオパークになったら大勢の人々がやってくる、と考えるのは甘く大きな間違いだ、といってよいでしょう。
日本ジオパークになっていないところでも、地質や地形をはじめ歴史や文化を生かし、たくさんの人々が訪れる観光地になっているところがいっぱいあります。
日本ジオパークに認定されること、日本ジオパークになったことではなく、日本ジオパークになったあと、それからの努力が必要だということであろう、と私は思います。

【私の提案】
『住民の盛り上がりはないし、思ったように観光客が増えないし、これでは公費の無駄遣いだと、議会で突き上げられるかもしれない、これから先どうしようかな・・・』
と悩んでいるジオパークの運営主体にあっては、この際、さっぱりと日本ジオパークネットワークから退会して、その土地の歴史や文化に根差した観光振興をめざしたほうが賢明であると私は思います。
いまの厳しい自治体の財政状況を考えたり、人口減少、少子高齢化など自治体を取り巻く諸情勢を考えるとき、うまくいかないものをずるずる続けるのではなく、すっぱり断ち切って、新たな方向に歩むほうが得策であろうと私は思います。
最後にひとつ、私が群馬県一がんばっていると思っている川場村は、日本ジオパークになっているわけでもありませんし、ましてや世界遺産があるわけでもありませんが、それでもすごい村になったのは、すごい村にするためにがんばった住民がいたこと、これに尽きるのです。
「かわばんち」:川場田園プラザ
くどいようですが、地域振興に必要なものは、日本○○とか世界○○といった〝タイトル〟ではなく、そこで暮らす人々ががんばって生きること、そのがんばる姿を洗練したものに磨き上げ、それを観光資源にしていくことではないかと私は思っています。

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